研究概要 |
“adrenomedullin(AM)"は我々により、ヒト褐色細胞腫抽出液より発見された強力な血管拡張性の降圧物質ペプチドである。AMのcDNAをヒト褐色細胞腫cDNAライブラリーより単離し、核酸の構造解析を行った。AM前駆体は185個のアミノ酸よりなり、AMのシークエンス以外に、20個のアミノ酸よりなる全く新しい降圧ペプチド“proadrenomedullinN-terminal 20 amino acid(PAMP)"が生合成されることを明らかにした。さらに、ヒトPAMPが生物学的活性(降圧作用、カテコラミン分泌抑制作用)を有することより、AM前駆体より、AMとPAMPが新しい生理活性ペプチドとして生合成され、両ペプチドが協調して循環調節に関与している可能性も考えられている。AMmRNAは肺,心,腎,血管などの組織にも副腎髄質や褐色細胞腫に匹敵する量で発現していることが判明した。さらに、ヒト血漿中AM濃度を測定可能なラジオイムノアッセイを確立し、正常人の血漿中にも約3fmol/mlとかなりの濃度で、AMが循環していることを明らかにした。各種疾患における血中AM濃度を測定したところ、心不全,腎不全,高血圧などの患者では正常人に比較して、AMがそれらの疾患の重症度にしたがって、増加していた。現在、AMやPAMPが新しい降圧ペプチドとして循環血液量調節に重要な機能をしていることを示すデータが得られつつあり、今後数年間のうちに、ナトリウム利尿ペプチドファミリーやエンドセリンに続く、新しい循環調節機構が明らかになってくるものと思われる。
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