研究概要 |
原発性免疫不全症やアレルギーなど免疫異常症の発症機序をリンパ球の分化や機能にかかわる分子の面から解析した。重症複合免疫不全症の伴性遺伝形成の病型はIL-2・IL-4・IL-7・IL-9,IL-15レセプター共通γ鎖の遺伝子異常によるが、本邦例につき検討し新しい遺伝子異常を示すものを見つけた。本症ではT細胞とNK細胞とが欠損するが、B細胞は存在する。このB細胞の免疫グロブリン遺伝子について検討したところ可変領域遺伝子の再編成が未熟型であること、成熟B細胞ではみられる突然変異が生じていないことなど分化の障害を示す所見をえた。骨髄移植によりT細胞を健康人由来もので再建してもこの異常は改善されず、この障害はT細胞欠損による2次的なものでなく、B細胞自身の欠陥によることが明らかにされた。高IgM症候群の伴性遺伝形式のものはCD40リガンド(CD154分子)の遺伝子異常によるが、本邦の13例について検討したところ、本症では未だ知られていない1つの異常遺伝子から2つのmRNAが作られている例を発見した。本症キャリヤ妊婦で羊水細胞の遺伝子診断を行ったが、出生後その結果が正しいことが確認され、実用可能であることが証明された。Wiskott-Aldrich症候群はX染色体上のWASP遺伝子の異常によるが本邦の8例について検討し、未だ知られていない遺伝子異常を3例にみとめた。大きな欠失を示す例は臨床的にも重症であった。細胞が活性化されるとアクチンの集合がみられるが、WASPに遺伝子異常があるとそれが障害されることを発見し、WASPの機能の一端を明らかにした。即時型アレルギーはマスト細胞上のFcεレセプターIに結合しているIgE抗体と抗原との反応によるが、マスト細胞でのFcεレセプターI遺伝子の発現がIL-4によって促進されることを発見した。IL-4はIgE産生を誘導するのみならず、この点でもアレルギー発生にかかわっていることが明らかにされた。
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