研究概要 |
サイトカインのなかで腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor α.TNFα)は凝固促進、白血球付着能の亢進、インターロイキン1および6の産生促進などの作用を有し、免疫応答・炎症・血管炎などの場では極めて重要なサイトカインである。TNF-αはいくつかの疾患でその血清レベルでの上昇が報告されていたが、その活性については疑問視されていた。それはTNF-αの産生に伴ってその活性を抑制するinhibitorが存在したからである。その後TNF-α inhibitorはTNF receptor(TNF-R)の細胞外部分が血清中に可溶化したものと同一であることが明らかになった。 血清中にsheddingしたTNF-Rのsoluble formであるp60 soluble TNF-R(sTNF-R,分子量55,000〜60,000)を川崎病で測定した。川崎病の血清中sTNF-R値は高値を示し、さらに冠動脈病変合併例では非合併例に比しより高値を示した。このsTNF-Rの高値はsTNF-α活性を反映していることになる。血清中sTNF-R値はCRP値と正の相関を示すが、冠動脈病変の発症を予知しうる因子としてはsTNF-R値が良い。また、これらの症例は全例ヒト免疫グロブリン製剤を使用している。すなわちsTNF-Rの高値はヒト免疫グロブリン製剤を投与しても冠動脈病変併発を予知しうる因子であることがわかった。
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