研究概要 |
今年度は、1)ジストロフィン(dy)欠損モデル動物作製、2)トランスジェニックマウスを用いたdy発現調節機構の検討、および3)NGFとNGFRの研究に取り組んできた。 1)に関しては過去数年の間、熊本大学遺伝発生医学研究施設の山村教授との共同研究として取り組んできたが現在のところキメラマウス作製段階でありモデル動物の作製には成功していない。現在もなお筋型dy,脳型dyそれぞれを標的遺伝子組み換え法によりその欠損マウスを作製すべく研究を続行している。2)に関してはマウスの筋型プロモーター1kbを1acZ遺伝子につないだコンストラクトを用いてトランスジェニックマウスを作製したところ、右心にのみ特異的に発現していることを観察した(1994年分子生物学会にて報告)。このことは、筋型プロモーターが右心、左心、骨格筋、平滑筋におけるdy発現をそれぞれに制御している可能性を示唆している。つまり心筋のdy発現を制御するプロモーター領域にのみ異常が起こった場合骨格筋の異常を伴わず拡張型心筋症が引き起こされる可能性を示している。この事実はMuntoniらが報告した筋力低下を伴わないが拡張型心筋症を示したdy異常家族例の病因を説明するものとして興味深いのと同時に特発性心筋症の原因病理としてdy異常が含まれる可能性を示唆している。3)に関してはこれまでtrkA,B,C抗体、BDNF抗体、NT-3抗体を用い筋ジストロフィー症における血管周囲のLNGFR活性の増加を説明すべく検討してきた。しかしこれらの抗体に対する免疫組織化学的反応はLNGFRの高活性を説明できる反応を示さず現在のところNT-5が関わっている可能性が残されているがそれ以外にはその他の未知の因子を考慮せざるを得ないと言う結果を得ている。
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