ヒトウィルソン病原因遺伝子を挿入したレトロウィルスベクターを作成し、LECラットを用いてヒトへの遺伝子治療法開発のための基礎的動物実験を計画した。まず第一段階として、ヒトウィルソン病原因遺伝子を挿入したレトロウィルスベクターの作成を試みた。ウィルソン病ではない患者の肝からmRNAを抽出し、オリゴdTをプライマーとしてcDNAを合成し、ヒト肝cDNAライブラリーを作成した。ヒトウィルソン病原因遺伝子cDNA断片をプローブに翻訳領域全域をコードするヒトウィルソン病原因遺伝子cDNAの単離を試みた。得られたクローンの塩基配列を決定した結果、全てのクローンが翻訳領域全域をコードしているものではなかった。これは、ヒトウィルソン病原因遺伝子翻訳領域が比較的長い(4.5kb)ためと考えられる。遺伝子治療に用いるベクターには翻訳領域全域をコードするcDNAが必須であるため、今回得られたクローンは全てベクターの作成には適さなかった。現在同じライブラリーを再度スクリーニング中である。再度全域をコードするクローンが得られない場合には、別の手法でcDNAライブラリーを作成し直す必要があると考えられる。
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