初年度にあたり、研究手法(FISH:fluorescence in situ hybridization、レーザー走査顕微鏡)の習熟とその検出能の検定に重点を置いた。 研究の進展状況に関しては、平成7年度研究計画調書にて既に報告したが、概要としては、(1)2 color FISHにより、Ip欠失、14q欠失などの神経芽細胞腫でみられる染色体の構造以上や数的変化が検出可能である。(2)共焦点レーザー走査顕微鏡での観察により、腫瘍組織の構築を保った状態でのFISHシグナルの観察が再現性よく行なえる。異常の2点が確認でき、手技としても習熟をえた。これらの手法により腫瘍内部における腫瘍クローンのheterogeneityが評価可能であり、計画当初の見通しに合致した結果がえられた。この他、FISHに用いる腫瘍組織の固定方法として、従来のホルマリン固定に比較し、アセトン、安息香酸、キシレンを用いたAMeX固定の方が、プローブの浸透性が優れ良好な結果がえられる点を明らかとした。また、組織内での腫瘍細胞と正常間質細胞との判別を明確にする為、免疫組織染色をFISHに併用しおこない、FISHでの検索対象細胞の内訳を明らかにする手法を確立した。このアプローチにより、抗LCA(lymphocyte common antigen)抗体、抗S-100抗体、抗GOα(GTP結合蛋白α subunit)抗体を用い浸潤リンパ球、シュワン細胞、腫瘍細胞の判別を行なっている。現在、実際の手術組織での検討を既に開始している。
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