研究課題/領域番号 |
06454308
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研究種目 |
一般研究(B)
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
前川 喜平 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (80056613)
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研究分担者 |
井田 博幸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (90167255)
大橋 十也 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (60160595)
松島 宏 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70190460)
所 敏治 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40112841)
衛藤 義勝 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50056909)
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キーワード | 異染性脳白質変性症 / アリルスルファターゼA遺伝子 / 遺伝型と臨床型 / アデノウイルスベクター / 遺伝子治療 |
研究概要 |
先天性ミエリン形成異常症の内、本年は日本人異染性脳白質変性症(MLD)10症例の遺伝子解析を行いその遺伝子型の異常を明らかにした。 これまでに我々は日本人成人型MLD症例において同定された変異445A(Gly99→Asp)は、日本人症例では多く認められている変異であり、そのホモ結合が幼児型となることを示した。また、一幼児型症例から変異1070A(Gly245→Arg)を同定した。さらに昨年は若年型症例のエクソン8上に変異2330Tを同定し、この変異がスプライスアクセプターサイトの選択に影響を与えることを報告した。しかし、この変異2330Tは発端者である症例以外には認められず、日本人後期後期発生型MLD症例における遺伝子異常は未だ十分に解明されたとは言えない。 方法としては、臨床的、酵素学的に,MLDと診断され、これまでの解析の結果、変異1070Aをヘテロ結合で有することが判明している若年型症例の白血球よりゲノムDNAを抽出した。PRC法を用いてこのゲノムDNAよりASA遺伝子を互いに重なり合う3つの領域に分けて増幅し、それぞれサブクローニングした。ダイオキシン法により多クローンにおける全エクソン(ポリアデニレーションシグナルを含む)、エクソン・イントロン境界の塩基配列を検討した。 結果並びに考察 1)これまでの塩基配列の検討の結果、変異445Aと対立するアリール上にASA遺伝子上のヌクレオチド番号(開始コドンのAを1とする)で897番目のG→Aの変異(897A)をエクソン3上に同定した。この変異の存在によりAla212(GCC)→Thr(ACC)のアミノ酸置換が生ずる。その他には現段階で他のエクソン、エクソンイントロン境界の塩基配列に異常を認めていない。 2)また、患児のgenomic DNAにおいて、Exon4にnucleotide number 1026のA→Gの点変異(1026G)が確認され、これによってTyr230→Cysのアミノ酸置換が生じていることを見出した。なおこの変異はmulticloneの分析からヘテロ接合で存在していることが判明した。今後本変異が実際に酵素活性低下の原因となっていることを確認するために、発現実験を行う予定である。また、ASO hybridization法を用いて日本人症例間における本変異の頻度を解析していきたい。 以上の結果より日本人MLDの遺伝子型は、白米人とは異なった遺伝子型を示す。更に現在成人型の遺伝子型を分析中であり、今後臨床型と遺伝子型を明らかにする。又、MLDの遺伝子治療をアデノウイルス、レトロウイルスベクターを用いて検討しておりSR-αのプロモーターを用いたアデノウイルスベクターにアリルスルファターゼA遺伝子を組み込んだ遺伝子発現を培養皮膚線維芽細胞に行い正常の数百倍の発現に成功している。
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