研究概要 |
川崎病の症例を増やして今年度は、急性期(20例)、回復期(20例)及び、対照小児(感染症は除く18例)、健康成人(20例)より採血した新鮮抹消血を材料として、抗体を用いてCD4陽性T細胞、又はCD8陽性T細胞に発現しているVβ2、Vβ8.1の割合の検討を行った。その結果これら4つのグループでは有意の差は認めなかった。この結果はこれまでの報告と異なるもので川崎病の原因を考える上で非常に重要な問題となる。そこでさらに詳細な検討を加えた。もしスーパー抗原が川崎病の病態に関係しているとすると、その病日で、Vβ2、又はVβ8.1陽性細胞の割合が異なる可能性があるので、上記川崎病3例について、3つ期間(i,1-5病日。ii,6-10病日。iii,11-15病日。)に分けて同様の検討を行ったが、この3つの期間で差は認められなかった。さらに抹消血あるいは、病変部皮膚生検、リンパ節生検材料よりT細胞を105個クローン化し(98クローンはCD3^+CD4^+CD8^-,7クローンはCD3^+CD4^-CD8^+)Vβ2、またはVβ8.1の発現の有無の検討を行ったが、Vβ2又はVβ8.1陽性細胞は認められなかった。川崎病は全身の血管炎症候群である。その成立にはTNF-αが重要な役割を果たしていると考えられている。今回クローン化した細胞のうち、TNF-αを刺激せずに産生しているクローンは全体の65%にも及んだ。これらの結果からは、Vβ2又はVβ8.1陽性T細胞は川崎病の病態には関係していないと考えられた。 我々の検討ではこれまでの報告にあるように、抹消血単球を一度凍結融解し、その後抗CD3抗体で刺激すると、Vβ2陽性T細胞の割合が新鮮末梢血では増加していなかったものでも、増加を示してくる。これまでの報告はその実験に問題があった可能性がある。
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