研究概要 |
チロジナーゼ陰性型先天性白皮症は、チロジーゼ遺伝子の変異により、活性のある酵素蛋白が生合成されないために発症すると考えられる。我々は世界に先駆けて、チロジナーゼ陰性型の患者の病因となるチロジナーゼ遺伝子の異常を報告した(Biochem Biophys Res Commun,164:990,1989)。 その後も別の患者に病因となる新たな異常を見い出している。(J Biol Chem,265:17792,1990)いずれの異常もチロジナーゼ酵素の蛋白部分の異常で、そのために活性が完全に消失しチロジナーゼ陰性型白皮症となるものである。 本研究では、我々が最近発見したチロジナーゼ陰性型の病因となる2種類の変異以外の異常をさらに発見すべく、またチロジナーゼ陽性型患者においてもプロモーター領域を含めたチロジナーゼ遺伝子の異常を発見すべく、できる限り多くの白皮症の患者について、そのDNA変異を検索する。その結果、遺伝子病としての全身性白皮症のDNAレベルの日本人での病因を全て明らかにし、それを用いた患者の出生前診断やキャリアーの診断方法を確立したい。 今回慶応大学皮膚科の清水先生より紹介されたチロジナーゼ陽性型患者について遺伝子解析を行った結果、今までに見い出された2種の変異と異なる第3の異常が発見された。この異常はチロジナーゼ遺伝子の蛋白のcoding regionであるexon 2に点突然変異を示し、一つのアミノ酸のコドンが蛋白合成における停止コドンに変わるナンセンス変異を起こしている。この変異はまだ欧米の患者においても報告のない未発表の変異でる。 今後さらに日本人患者における新たな変異の発見に努め、患者の出生前診断やキャリアーの診断方法の確立を期する。
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