研究概要 |
今年度の研究では主にヒト,マウス表皮に常在するT細胞の機能を明らかにすることを目的とした。 ヒトでは固定薬疹病変部表皮に多くのT細胞が常在しており、これを分離後、様々の解析を行った。これらのT細胞は主にαβ型T細胞レセプター(TCR)/CD3を発現し、CD4^+8^-,CD4^-8^+などのphenatypeを示した。CD3/TCRを介したシグナルによりキラー活性を示すとともに自己抗原に対する反応性が認められた。これらの表皮内T細胞はきわめて限られたTCR VαVβ遺伝子を用いており、表皮細胞に発現される何らかの自己抗原を認識していると考えられた。 一方マウスにおける表皮内T細胞の大部分をためるγδTCRを発現するいわゆるdendritic epidermal cell(dEC)はVγ5という単一の遺伝子を発現しているが、この細胞の機能を明らかにするためにgene targetingにより作成したγδT細胞欠損マウス(δ^<-1->マウス)を用いてdECのない表皮の免疫応答について検討を加えた。我々はすでに自己クラスII抗原を認識しキラー活性を発揮するCD4^+T細胞を局所移入することにより、移入マウス表皮に選択的表皮破壊をきたす、いわゆるcutaneous graft-versus-host disease(GVHD)の実験システムを樹立しており、このδ^<-1->マウス及びコントロールのδ^<+1->マウスを用いて種々の検討を行った。δ^<-1->マウスではコントロールと比べこの自己反応性クローンによる遅延型過敏反応,GVHDともに有意に遷延化した。正常マウスではこの自己反応性クローンによる表皮構築の破壊は自然に退縮し、以後その部の表皮はクローンの攻撃に対し抵抗性となるが、δ^<-1->マウスでは、この抵抗性が誘導されなかった。この抵抗性の裏失は、δ^<-1->マウスにdECのprecursorであるDay16胎児胸腺細胞をδ^<+1->マウスから採取し移入することにより回復した。以上の結果はdECが表皮の抵抗性発現に重要な役割を果していることを示している。
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