研究概要 |
神経線維腫症には幾つかの病型がみられるか、古典的レックリングハウゼン病は神経線維腫症1(neurofibromatosis,NF1),両側性聴神経腫瘍を有するものはNF2と分類されている。NF1の遺伝子は1990年にクローニングされ、その後に全塩基配列が明らかにされた。NF1遺伝子には59のエクソンがある。われわれはこれらのエクソンについて、PCR-SSCP法を用い40例のNF1患者の遺伝子の検索を行ったが、変異の認められた症例はエクソン44のcDNA 7712から7720までの9bpの欠失と2bpの挿入により7bpのフレームシフトを起こした1例のみであった。これは遺伝子が約350kbpと巨大なためであり、さらにイントロンを含めた検索を行う必要がある。一方、NF2の遺伝子は1994年にクローニングされ、22q12に坐位することが明らかになった。遺伝子産物はmerlin(meosin-ezrin-radixin-like protein)と命名され、この蛋白は細胞骨格関連蛋白と相同性がみられる。われわれは聴神経腫瘍がみられず、皮膚や脊髄などに神経鞘腫が多発する疾患(神経鞘腫症)について、22番染色体上のDNAマーカーを用いsout-hern法で検索したところ、NF2遺伝子を含むプローブで神経鞘腫の3/7に対立遺伝子の欠失を認めた。さらに欠失の認められた神経鞘腫症3例のうち2例にgerm lineにもNF2遺伝子の変異がみられ、神経鞘腫症はNF2と同一疾患であると結論した。
|