研究概要 |
本研究は自己免疫性甲状腺疾患におけるTSH受容体蛋白の役割を追求し、自己免疫性甲状腺疾患の病態の本質に迫ることを目的とする。まず第一に、実験マウスにおいてTSH受容体蛋白で免疫し組織学的に甲状腺炎がおこるか否かを検討した。 TSH受容体細胞外領域をmaltose binding protein(MBP)との融合蛋白(TSHR-MBP)として大腸菌に発現させ、アフィニティーカラムと電気泳動法を用いて融合蛋白を精製し、これを用いて4種のH-2の系の違うマウス(BALB/C、C57BL/6、CBA/J、SJL)に組み換えTSH受容体蛋白を免疫した。免疫後、甲状腺の病理学的変化、血清の抗体価、甲状腺ホルモン値(T4)、TSH受容体抗体(TSAb及びTBIAb)を測定し検討した。ELISAによるマウスの血清抗体価は5,000倍希釈にてOD405は約1.0(対照は0.07)と高値であった。甲状腺はC57BL/6マウスのみに巣状のリンパ球集落が認められ、当初は巣状甲状腺炎と考えたが、対照のマウスにも同様の所見を認め、異所性胸腺と結論し、結局いずれのマウスにも甲状腺炎は起こらなかった。また、TSAb及びTBIAbも全て陰性であった。T4値に関してはMBPのみの免疫とTSHR-MBPを免疫したマウス両方とも低値で、これは免疫による侵襲、ストレスが原因と考えた。 大腸菌による組み換え蛋白による甲状腺炎の発症には、抗体が受容体の立体構造を認識することが原因の1つと考えられるため、今後、受容体の立体構造を保った組み換え蛋白を作製して免疫を行うことを検討している。
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