研究概要 |
前年度までの研究で、AM前駆体mRNAは副腎以外にも肺,心臓,腎臓など多くの組織でかなりの量発現していること、またAMは血中を循環してホルモンとして循環調節に関与することを明らかにしている。さらに、血管組織や培養血管内皮細胞(EC)、血管平滑筋細胞(VSMC)での多量の遺伝子発現及びAMの産生が見出され、その産出は種々の循環調節因子リポポリサッカライド(LPS),IL-1,TNFなどのエンドトキシンショック誘導因子により著しく亢進することから、AMは局所因子としても循環調節に関与するものと考えられる。 本年度は、エンドトキシンショック・モデルとしてラットにLPS投与を行い、AM遺伝子発現及び血中AM濃度についての検討を行った。 ラットへのLPS投与(5mg/kg)により、血中AM濃度は経時的に増加し、LPSの投与で1時間後に約3倍、3時間後に約15倍に上昇した。AM遺伝子の発現はほぼ全組織で亢進しているが、特に血管,肺,腸管などでの増加が著しく、これらが血中濃度上昇の原因と考えられた。さらに、ヒトにおいて敗血症性ショック患者の血中AM濃度を検討した結果、全ての患者で上昇し、正常者の100倍に達する例も認められた。また、血中AM濃度と末梢血管抵抗との間に負の相関性が認められ、AMがエンドトキシンショックなどの低血圧症時に降圧性物質として機能している可能性が示唆された。 さらに培養EC,VSMCでのAM産生は、ステロイドホルモン,甲状腺ホルモンや種々の血管作動性物質などで促進され、8Br-cAMP、フォルスコリンなどで抑制されるなど、多種類の因子で複雑に制御されていることが明らかとなった。 今後アドレノメデュリンの生体内での役割をさらに明らかにすることにより、新しい循環調節機構が解明されるものと期待される。
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