研究概要 |
マウス心臓移植の系において,ICAM-1とLFA-1に対する抗体を投与することにより免疫寛容が得られることがわかっており,この画期的な治療がドナー側,レシビエント側のどの接着分子が関与しているかを調べるために,ラットおよびマウスのそれぞれの接着分子抗体を投与し,その結果ドナー側のICAM-1とレシビエント側のLFA-1が拒絶反応におけるシグナル伝達に重要であることが平成6年度の時点で判明した.さらにこの組み合わせが異種間移植の拒絶反応抑制に大きな役割を示していることが判明した.さらにIL-2産生抑制物質であるFK506を併用することにより免疫抑制効果は相乗的に働いた.本年度は以上のことを免疫学的にさらに検証するために、リンパ球細胞培養および組織免疫染色を行い,細胞性免疫が強く抑制されていることが判明した。これらの事実は異種間での臓器移植にとって新しい知見でわる.しかし異種抗体の産生を抑制できない事実もつかんだ。マウス同種移植において,ICAM-1とLFA-1の抗体のよる免疫寛容機序をさらに深く調べるために,サイトカインの発現と寛容導入されたマウスのリンパ球を移植前にマウスに導入することにより,同様の寛容が得られる事実を発見した.寛容導入マウスでのリンパ球のサイトカイン発現の違いを認め,寛容導入の機序をさらに細かく追求することができた. 肝臓移植について同様の実験を行っているが現在まとめるに至っていないがほぼ同様の知見が得られそうである。免疫寛容を得るには液性免疫の抑制が不可欠でありこれらの問題点を解決するためにまだ時間が必要である。しかし当初の目的であった異種移植における接着分子の役割が明らかにされ更なる研究が期待される。
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