研究概要 |
我々は,異種間での拒絶反応に細胞間接着分子がどのように関与しているかを解明し,臓器移植の治療において新しい展開を求めた.移植のモデルとしてラットの臓器をマウスに移植する系を確立し(特に心臓および肝臓)この異種間移植のモデルを利用し,接着分子の役割について検討した.マウス心臓移植の系において,ICAM-1とLFA-1に対する抗体を投与するとにより免疫寛容が得られることがわかっており,この画期的な治療がドナー側,レシビエント側のどの接着分子が関与しているかを調べるために,ラットおよびマウスのそれぞれの接着分子抗体を投与し、その結果ドナー側のICAM-1とレシビエント側のLFA-1が拒絶反応におけるシグナル伝達に重要であることが判明した.さらにこの組み合わせが異種間移植の拒絶反応抑制に大きな役割を示していることが判明した.さらにリンパ球培養,免疫組織染色を行い,細胞性免疫の抑制が役立っていることが判明した.さらにIL-2産生抑制物質であるFK506を併用することにより免疫抑制効果は相乗的に働いた.これらの事実は異種間での臓器移植にとって新しい知見である.マウス同種移植において,ICAM-1とLFA-1の抗体による免疫寛容機序をさらに深く調べるために,サイトカインの発現と寛容導入されたマウスのリンパ球を移植前のマウスに導入することにより,同様の寛容が得られる事実を発見した.寛容導入マウスでのリンパ球のサイトカイン発現の違いを認め,寛容導入の機序をさらに細かく追求することができた. 接着分子は多様でありそれぞれの働きについて特異的な区分が十分になされていないのが現状である.我々は臨床において,生体部分肝臓移植を行っているが,現状では拒絶反応を完全に抑制できない.接着分子の抗体により特異的な寛容がえられることを目標にさらに実験を積んでいきたいと考えている.
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