研究概要 |
腹腔内洗浄細胞診施行時に phosphatidyl-inositol phospholipase C(PI-PLC)を添加し、癌細胞膜表面のcarcinoembryonic antigen(CEA抗原)を遊出させるPI-PLC法を考案し、腹膜播種性転移早期診断法としての有用性を検討した。基礎的検討:1)CEA産生培養細胞株KATOIIIを用いた検討でCEA濃度は,PI-PLC添加により約1.7倍に増加した。2)CEA濃度はPI-PLC添加時間、標的癌細胞数依存性に増加した。臨床的検討:胃癌81例を対象に開腹時細胞診、細胞CEA染色,PI-PLC法を施行した。1)P陽性12例の陽性率は細胞診が91.6%,細胞CEA染色が75.0%,PI-PLC法が83.3%、陰性69例では各々2.9%,4.3%,7.2%であった。2)PI-PLC法によるとCEA感度増強程度は1.8から600倍で、陽性例の特徴は臨床病理学的にも顕微鏡レベルの腹膜転移が十分推察される症例であった。3)Po stageIIIでPI-PLC法陽性であった2例中1例に腹膜再発を認めた。以上より、PI-PLC法は胃癌腹膜播種性転移の客観的診断法として有用であると考えられた。次に、PI-PLC法を応用した診断用キットを開発・試作した。対象:1)培養細胞株MNN-45、及びKATOIIIの生食浮遊液。2)胃癌53例の開腹時の腹腔洗浄液。方法:検体をGlass Microfibre Filter(GMF)で可及的濾過しGMF上の細胞を抗CEA抗体含有固相化フィルム上に接触させ、0.05単位PIPLC添加後、60分間反応後発色させ、非添加例との間で比較し色調差を認めた例を陽性と判断し(PIPLC-kit法)、細胞診等と比較した。結果:1)PIPLC-kitはMNN-45 5.0×102個、KATOIII1.0×103個が検出可能であった。2)細胞診陽性の16例はPIPLC-kit法でも全て陽性であった。陰性37例中PIPLC-kit法で5例が陽性と判定された。肉眼的腹膜播種陰性の42例中細胞診で5例、PIPLC-kit法で10例が陽性であった。以上の結果、PIPLC-kitは腹膜播種性移転簡易早期診断法として有用である可能性が示唆された。
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