研究概要 |
我々はin vitroにおいて低酸素-再酸素化負荷をかける系を作成し,肝細胞の増殖能に虚血-再潅流障害の一要因である低酸素-再酸素化負荷がどのような影響をあたえるのかを検討した。 結果 低酸素の継続時間に相応して肝細胞内のATPが減少し、ある時間以上の低酸素では時間相応性に肝細胞のviabilityを低下させた。またATPの減少に応じて肝細胞の上皮増殖因子によるDNA合成能が減少することがわかった。この機序を説明するために、肝細胞の上皮増殖因子受容体結合試験を実施し、受容体の結合能力の低下を認めた(廣瀬ら,投稿準備中)。 肝細胞の上皮増殖因子受容体の結合は細胞内signalをcontrolするprotein kinase C(PKC)によって制御を受けているとされている。そこで我々は,低酸素-再酸素化負荷での受容体結合能力の低下へのPKCの関与をPKCの阻害剤 H-7, staurosporineを用いて検討した。その結果staurosporineが,低酸素による肝細胞の上皮増殖因子受容体結合能力低下を回避させることが解明された。(廣瀬ら,投稿準備中)。現在はstaurosporineによるin vivoでの肝再生の変化につき検討中であり,肝切除中の血行遮断や肝移植の際の温,冷阻血がミトコンドリアのエネルギー代謝に障害を与え,肝再生の関連した増殖因子受容体,細胞内シグナルに影響を与えるという仮説の証明は達成されたと考える。
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