1. 肝切除術後患者において、リンパ球β2-アドレノレセプター結合能を測定し、肝ミトコンドリアのRedox Potentialを反映するAKBRの変化との関係を検討した。術前値に対する術後値の低下率で評価したリンパ球β2-アドレノレセプター最大結合能低下は、術後AKBRが低値を推移した群ではAKBRが高値を推移した群より少なかった。肝切除による外科的ストレスはリセプター結合能にも影響を及ぼし、またAKBRの変化は外科的ストレスの程度を反映していることが示唆された。 2. 細胞外FK結合蛋白(FKBP12)の免疫抑制剤FK506に及ぼす作用をin vitroと肝移植術後患者において検討した。FKBP12は、PHA誘導によって起こるヒト末梢血単核球増殖反応に対するFK506の抑制作用を抑制した。臨床においては血清中FKBP12の急激な上昇を認めた症例では、おそらく免疫抑制剤FK506の作用がFKBP12によって抑制されることは、肝移植後の急性細胞性拒絶反応の発生に関与し、またFKBP12の持続的な高値は拒絶反応の遷延に関与している可能性が示唆された。 3. ラット肝細胞において、一過性の非致死的低酸素がEGFによるDNA合成に及ぼす影響を検討した。一過性低酸素はLDHの上昇を来さず、細胞内ATP量を一過性に低下させるが、再酸素化によって回復する程度とした。この低酸素状態はEGFレセプターの蛋白発現に影響を及ぼすことなくそのレセプター数を減少させ、EGFレセプター分子の可逆性変化によってDNA合成を抑制することが示唆された。
|