平成6年度に予定していた実験すべてに予定の結果が得られた。 1.膵臓癌の手術の際に切除した正常膵臓部分よりtotal RNAを分離し、reverse transcriptaseにてcDNA libraryを作成。PCR法によりインシュリン遺伝子を増幅し、分離しえた。 2.分離したインシュリン遺伝子を、cloning vectorに組み込み、大腸菌中で増殖させ、分離、精製し、次いで市販の遺伝子組み込み用vectorにneomycin耐性遺伝子とともに組み込み、再度大腸菌中で増殖、精製した。 3.インシュリン遺伝子組み込みvectorを、CHO卵巣細胞株にLipofectAMINEを用いたカチオン性油脂法にて導入し、neomycin含有培養液中にて培養し、neomycin含有培養液中にて形成されたcolonyを分離培養し、これらの細胞におけるインシュリン遺伝子の発現クローンをPCRを用いて増幅してスクリーニングした後、アガロースサブマリン電気泳動を行い、インシュリン遺伝子の発現を確認しえた。 4.インシュリン遺伝子発現細胞株を8株得、これを継代培養し、培養液中に分泌されたインシュリンの濃度を市販のkitを用いてELISA法にて測定たところ、5x10^6個の細胞あたり、1〜100μUのインシュリン産生を認めた。 5.これらの株において、インシュリンの産生はin vitroで6カ月以上持続している。現在、以上の実験を繰り返し、平成7年度のin vivo実験のために、インシュリン遺伝子の発現およびインシュリン産生の最も強い培養細胞株を樹立すべく実験中である。 以上の結果は、第30回日本移植学会総会のシンポジウム『移植医療における細胞工学の応用』(1994.11.24)、および第45回日本消化器外科学会総会ワークショップ10(2)『消化器外科領への分子生物学的アプローチ(治療)』(1995.2.24)において報告した。
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