研究概要 |
乳癌に対する乳房温存療法を施行するに際し問題となる、乳管内進展の状態を把握する目的で乳管内進展病巣の分布を詳細にマッピングし、これをもとに乳癌の温存療法施行例における乳管内進展病巣の進展分布および到達距離について検討した。【方法】20例の乳房温存療法施行例の摘出標本についてWellingsの方法により2mmの厚切り連続切片標本を作成、これをヘマトキシリン染色した後サリチル酸メチルにより透徹した。これを実体顕微鏡で観察し乳管の連続性を保ちながら再構築した2次元画像を作成して、乳管内進展病巣の進展方向、距離の計測を行った。さらに三次元画像ソフトを用いて入力し、三次元画像を作成し観察した。【結果】乳管内進展病巣は基本的にほぼすべての症例に存在した。しかしその到達距離は様々であり、検討した20標本の最大到達距離は4.2cmであった。これらについてその進展方向、距離を整理検討すると、乳頭方向は腫瘍からの距離が1cm,2cm,3cmと離れるにしたがい、乳管内病巣の存在確立は65%,15%,10%と低下する。一方側方向、末梢方向は乳管内進展は一般に軽度であり、ともに2cm離れるとその存在は見られなかった。また乳管内病巣が乳管吻合を介して隣接する乳管へ進展する像がえられており、乳管内病巣が想像以上に広範囲に存在する機序を説明する根拠となる所見とえいる。【結語】乳管内進展は乳頭方向に高度であり、温存療法施行時には乳頭方向を他の方向に比し広汎に切除する必要がある。側方向、末梢方向は2cmのマージンをとればかなりの率で乳管内進展病巣もとりきれることがわかった。基本的にはsurgical marginをいかに増やしても癌の遺残の可能性は完全に0にはならないが、外科的に可能な限り病巣を取り除くことが局所再発を減少させるために必要であることは明らかであり、このような成績は切除範囲の決定に重要な情報であるといえる。
|