研究課題/領域番号 |
06454374
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
柿田 章 北里大学, 医学部, 教授 (90109439)
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研究分担者 |
伊藤 義也 北里大学, 医学部, 助手 (40203187)
今井 潔 北里大学, 医学部, 助手 (10176472)
高橋 毅 北里大学, 医学部, 講師 (70245405)
石田 和夫 北里大学, 医学部, 講師 (50168225)
佐藤 光史 北里大学, 医学部, 助教授 (40118815)
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キーワード | 肝移植 / 酸素化潅流 / ダブルバルーン / 肝保存 / 初期冷却潅流 / 脳死 |
研究概要 |
脳死肝移植ではドナーの持続する低血圧状態によってドナー肝のviabilityが低下していることが予想される。そこで我々は家兎を用いて実験的脳死モデルを確立させ、低血圧状態持続下でも血液生化学的あるいは形態学的には脳死6時間後までは肝に変化が認められなかったことを報告した。しかしながら今年度の研究により内分泌ホルモンのうち代謝に関与する甲状腺ホルモン(fT3)が脳死後減少していることをみいだした。また抗利尿ホルモン、コルチゾール、インスリンなどには変動はみられなかった。さらに肝組織中のアデニンヌクレオチドを測定すると脳死後の肝energy chargeは正常肝よりも有意に減少していた。さらに肝組織血流量をレーザードップラー血流計で測定したところ脳死後には前値の40%に減少していたことが判明し、肝viabilityの低下が認められた。一方、経大動脈性にダブルバルーンカテーテル法を用いて初期冷却潅流を酸素化した肝潅流法の開発をおこなった。この方法によって肝の酸素化初期潅流をおこない摘出肝を低温単純浸漬保存したところ、非酸素化初期潅流をおこなった肝にくらべて肝組織中のアデニンヌクレオチドが維持される傾向を示し、形態学的にも保存48時間後の肝ミトコンドリアの変性所見を抑制する効果があることが示された。そこで我々が確立した脳死モデルにおいて同様の酸素化初期潅流を行なっこところ潅流直後の肝組織中のATP濃度が非酸素化初期潅流に比べて有意に高値であった。また超微形態学的にも保存48時間後の肝ミトコンドリアの変性所見が抑制された。今後は初期潅流の酸素化に加え保存液の酸素化を行なうことによってよりviabilityの維持された肝が得られる可能性が示唆された。また、経大動脈性のダブルバルーンカテーテル法による潅流は肝以外の腹部臓器摘出に有効な方法になりうることも考えられた。
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