研究概要 |
虚血は細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)の上昇、ATP枯渇を引き起こすが、細胞障害は急激な酸素供給による再還流後に生じる。しかしながらその正確な機序は現在でも明らかになっていない。私どもは再灌流後ににミトコンドリア(Mt)内膜透過性の亢進(MPT)が生じ、このことが虚血再還流障害の原因であると仮定し実験を進めた。遊離Mtを用いた無酸素/再酸素化モデルでは、再酸素化後にMt膜電位の低下、溶液中の[Ca2+]の増加を認めた。これらの異常はMPT阻害剤であるcyclosporin A,ruthenium red,およびEGTAを再酸素化直前に添加することにより全て抑制し得た。培養細胞(MDCK cell)でも同様に無酸素/再酸素化モデルを作製した。[Ca^<2+>]iは、無酸素中徐々に増加を認めたが再酸素化後直ちに正常範囲内に低下した。Mt膜電位は、無酸素中、再酸素化後を通じて大きな変動を認めなかった。以上の結果より遊離Mtにおいては再灌流後にCaサイクリングの結果MPTが生じる。その結果脱供役することが確認されたが、細胞においては今回用いた条件にて明らかなMPT並びに再酸素化障害を認めなかった。
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