研究概要 |
当初の予定であった胆道癌の癌遺伝子や癌抑制遺伝子の増幅や変異の検索は、一連の機材の納入が遅れたため,未だ十分な解析を行うに足るデータが得られていないが,本年度は他に、肝内胆管癌の染色体欠失パターンのサザンブロット法による検索や,胆管癌の各種分子生物学的パラメーターの免疫組織学的検索を行い,若干の興味ある成績を得ることができた. 肝内胆管癌の染色体欠失パターン:StageIV-A症例で相対非治癒切除であった7例について,肝細胞癌における多段階発癌との関連が指摘されている16qおよび17p染色体の欠失パターンを検索したところ、17pは全例に欠失しており,さらに16q欠失を認めた6例はいずれも3年内に再発死亡したのに対し、16q欠失を認めなかった1例のみは5年以上無再発生存した.胆管癌の分子生物学的パラメーターと予後:治癒あるいは相対非治癒切除後の予後の予測は従来用いられてきた病理組織学的因子のみでは困難であるが、3年未満に再発した早期再発例(17例)と5年以上無再発で生存した長期生存例(13例)の各種分子生物学的パラメーターの陽性率を比較したところ、癌細胞核DNA量がAneuploidのものは早期死亡例では52.9%であったのに対し、長期生存例にはなく、両者間に有意差(p<0.01)が認められた.また、細胞外マトリックスの一つであるTenascinの陽性率は早期死亡例では70.6%と、長期生存例の7.7%に比し有(p<0.01)に高率で、さらに局所再発では76.9%、遠隔転移では16.7%と両者間に有意差(p<0.05)が認められ、その発現と局所再発との関連性が指摘された.
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