遊離肝細胞を用いるハイブリッド型人工肝臓の開発を目的として、機能発現に優れているコラーゲンゲル包埋肝細胞を用いたホローファイバー型人工肝モジュールを作製し、その機能を検討した。一方、ハイブリッド型人工肝モジュール保存法の開発を目的として、コラーゲンゲル包埋肝細胞を用いて4℃での低温保存について検討し、以下の知見を得た。 ラットの体外循環実験に対しては4×10^7個の肝細胞を組み込んだ人工肝モジュールを使用した。ラット急性虚血性肝不全モデルでは、アンモニア代謝能、糖新生能を認めた。ガラクトサミンによるラット薬剤性肝不全モデルに対して総胆汁酸、GOTの改善を認め、人工肝を用いた体外循環が宿主肝の機能回復に効果的であることが示唆された。ウサギの体外循環に対しては3.5×10^8個の肝細胞を組み込んだ人工肝モジュールを使用した。灌流実験において、アルブミン合成能・尿素合成能・アンモニア処理能は灌流0日目に最も優れていた。また、灌流液中にウサギ血漿と同じ分子量の蛋白の発現を認めた。ウサギ全肝摘出(無肝)モデルでは循環動態の改善、生存時間の有意な延長、血中アンモニアの上昇抑制に効果を認めた。人工肝モジュール2本直列に用いた体外循環では、プロトロンビン時間の改善、フィシャー比の改善等、より強力な肝機能補助効果を認めた。以上より、本システムが解毒能・合成能・代謝能を有する新たな肝機能補助システムとして有効であることが示唆された。また、University of Wisconsin液を用いて4℃での肝細胞の保存について検討した。14日間低温保存したコラーゲンゲル包埋肝細胞は形態学的(位相差顕微鏡、走査電子顕微鏡)には球状形態を示し、機能学的には尿素合成能、糖新生能、リドカイン代謝能(P-450機能)、アンモニア代謝能が良好に維持されていた。
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