研究概要 |
大腸癌の切除不能肝転移症例に対してIL-2MF肝動注を施行して76%の奏効率を得た(pilot study)ことをもとに全国15施設によるprospective randomized study(Phase II)を施行した。A群:MMC,5-Fu(MF),B群:IL-2(210万単位/週2回)MMC,5-FU(大量間歇IL-2MF),C群:IL-2(70万単位持続)MMC,5-FU(少量持続IL-2MF)の3群設定を行い、1995年12月までに46例の登録を得た。うち無治療期間不足、他病変存在などの不適格4例を除く42例が適格症例であり、うちわけはA群15例、B群15例、C群12例であった。さらに観測不備など不完全3例(いずれもC群)を除いた39例が完全例であった。(A群15例、B群15例、C群9例)。各群間で背景因子に有意差は認めず、奏効率はそれぞれA群40%(6/15),B群60%(9/15),C群78%(7/12)であった。これはこれまでのpilot studyの結果を支持するものであり、今後さらに大きな規模での臨床治験を計画中である。これら臨床治験と並行して、本法の作用機序の解析をラットの肝動注の実験系で進めている。昨年度までの解析にてIL-2肝動注で肝リンパ球の抗腫瘍活性が選択的に増強されることが確認されたため今年度はIL-2の薬理学的作用に重点をおいた解析を行った。すなわちラットで5-FuとMMCの肝抽出率(HER)を測定し、IK-2の併用作用を検討したところ、IL-2の併用でそれらが上昇することが判明した(K.Okuno et al.Surgery Today:in press)。この事実は化学療法剤の肝臓での停留率が亢進し、全身的な副作用が軽減することを意味する。今後はさらに担癌モデルを用いてIL-2の腫瘍血管内皮に対する作用を検討していきたい。
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