研究概要 |
パイロットスタディーとして良好な成績(奏功率76%)を得た大腸癌の切除不能肝転移に対するIL-2とMMC,5-FU併用免疫化学肝動注療法の有効性を確認するために多施設共同での無作為化臨床試験(Phase II)を施行した。A群:MMC,5-FU(MF),B群:IL-2(210万単位/週2回)MMC,5-FU(大量間歇IL-2MF),C群:IL-2(70万単位持続)MMC,5-FU(少量持続IL-2MF)の3群設定を行い、46例の登録を得た。うち42例が適格症例であり、うちわけはA群15例、B群15例、C群12例であった。さらに観測不備など不完全3例(いずれもC群)を除いた39例が完全例であった(A群15例、B群15例、C群9例)。各群間で背景因子に有意差は認めず、奏功率はそれぞれA群40%(6/15),B群60%(9/15),C群78%(7/12)であった。これはこれまでのパイロットスタディーの結果を支持するものであったため、さらに大きな規模での臨床治験(後期第II相試験)に進むことになった。これら臨床治験と並行して、本法の作用機序の解析をラットの肝動注の実験系で進めている。昨年度はIL-2の薬理学的作用に重点をおいた解析を行った。すなわちラットで5-FUとMMCの肝抽出率(HER)を測定し、IL-2の併用作用を検討したところ、IL-2の併用でそれらが上昇することが判明した。本年度はさらにIL-2併用による肝臓内5-FU代謝酵素の変動を検討したがIL-2併用によってもThymidylate Synthase活性やDihydrouracil Dehydrogenase活性に大きな影響は認められずIL-2によってこれらの酵素活性に変動がおこる可能性は低いと考えられた。
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