研究概要 |
平成6年度では、ヒト細胞培養系において同種気道上皮細胞株をstimulatorとした場合、同種リンパ球が活性化されるかどうかをIL-2,10分泌能を中心に検討した。[方法]ヒト末梢血リンパ球(PBL)10^7個をeffectorとし、stimulatorとしては、(1)同種PBL(2)同種気道上皮細胞株BEAS-2Bとしたリンパ球混合培養系(MLC)を作成した。コントロールとして(3)stimulatorなし(4)effectorなしの以上4種類のMLCを作成した。培養72時間後の生細胞数の直接計数・MTT assay・上清中のIL-2,IL10濃度を測定した。またBEAS-2BおよびPBLについて、抗HLA-class Iおよびclass-II monoclonal抗体で染色し、Flow cvtometry(FCM)を行った。[結果](A)MLCの72時間後の各々の生細胞数・MTTassay活性ではともに(1)>(2)>(3)の順であった。(B)IL-2濃度:(1)2.13±0.26(Unit/ML)(2)1.82±0.12(3)1.45±0.54(4)1.42±0.10であり、(1)>(2),(3)と有意差を認めた。(C)IL-10濃度:(1)9.30±11.8(pg/mL)(2)128±110(3)13.0±15.3(4)8.9±17.8であり、有意に(2)>(1),(3)であった。(D)FCMではBEAS-2BはClass-I,II各々ほぼ100%染色陽性であった。[考察]BEAS-2Bは細胞表面にHLA-Class I,IIを発現していたが、MLCでは同種PBL刺激と比較して、軽度の細胞増殖を引き起こし、IL-2分泌誘導は有意に少なく、またIL-10分泌を有意に促進した。即ちIL-2分泌に続くTh,CTLのclonal expansionが十分進まず、さらにIL-10によってCTLの増殖阻害が起こると考えられた。仮説としてBEAS-2Bは同種リンパ球のTh2分画を刺激・活性化すると考えられた。[結論]気道上皮細胞株Beas-2Bは同種PBLとのMLCにおいて、PBLを増殖させるがIL-2分泌増加は軽度で、IL-10分泌を促進した。
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