研究概要 |
本研究では肺・心肺移植におけるドナー肺実質細胞がレシピエントリンパ球の賦活化に関与するかどうかに関して基礎的な検討を行った。2年間の研究で明らかとなった点について要約する。 6年度は、適当な条件下で気道上皮細胞株がアロリンパ球に指向性活性を与える事を明らかにした。7年度は気道上皮細胞表面に発現する接着分子と賦活能との関連について検討を行った。 ヒト末梢血リンパ球(PBL)10^7個をeffectorとし、stimulatorを同種気道上皮細胞株BEAS2B(B2B)とした混合細胞培養系におけるPBLのIL-2,10分泌能を検討した。培養72時間後のPBL-B2B混合培養では、中等度の細胞増殖を認め、培養液中IL-2濃度は上昇しなかったがIL-10濃度は128±110pg/mLであり、通常のリンパ球混合培養の9.30±11.8より有意に高値であった。 次いで、B2B表面を、免疫活性発現に関連する(A)抗HLA-classI(B)classII(C)抗ICAM-1(D)抗B7(E)抗LFA-3モノクローナル抗体(MAb)にて予めマスクしPBL-B2B混合培養後の活性PBL生細胞をMTTassayにて測定した。培養72時間後のHLA-classI,II、LFA-3のマスクで有意にMLC活性が低下したがICMA-1,B7では低下しなかった。気道上皮細胞株B2Bは同種PBLとの混合培養でIL-10分泌を誘導した。B2B刺激でPBLのTh2分画が活性化したと考えられた。この活性化にはLFA-3が関与していた。B2B表面にはICAM-1,B7が発現しているのにこれを阻害しても活性化が低下しなかったことは、別の機序によるCOS機能の低下があるか、または別種のCOSが欠損している可能性があると考えられた。
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