研究概要 |
【目的】我々はこれまでに術前化学療法による白血球数の減少が気管支形成術における吻合部創傷治癒の遅延につながることを報告してきた。今回は中でもマクロファージとTリンパ球の創傷治癒に及ぼす影響を実験的に検討したので報告する。【対象および方法】8週齢の雄性Wistar ratを3群に分け、A群(n=5)術前2日前と術後1日目にウサギ抗ラットマクロファージ抗体0.5ml i.pし、術後に単球の遊走能を阻害する抗ラットMonocy te Chemotactant Protein-1抗体を1mg/kg連日i.v、B群(n=5)術前後2日目に抗ラットCD4,DC8抗体を10mg/kgずつそれぞれi.v、C群(n=5)をcontrol群とした。手術は全麻下に左主気管支を切断、8-0 prolineの連続縫合による端々吻合を行った。術後3,5,7日目に犠牲死させ、抗張力としてBursting Pressure(BP)を測定、また組織中のコラーゲンの指標となるHydroxyprolin(HP)の含有量及び免疫染色による病理組織学的検討を行い、吻合部の創傷治癒の評価を行った。【結果】末梢血ではA群の単球は、術後3日目で対照群の平均45%まで減少したがその後次第に回復した。また組織学的にも術後3日までは単球の創への浸潤は強く抑制されたがその後次第に増加した。B群のCD4,CD8は投与2日後にそれぞれ平均約3%,4%にまで減少し、そのまま術後7日目まで継続、創への浸潤も強く抑制された。BPはA群の術後3,5日目で各々平均134【plus-minus】23,478【plus-minus】144mmHgと対照群260【plus-minus】76,725【plus-minus】151mmHgより有意に低値であった(p<0.01)。一方B群では術後3,5日目には差は見られなかったが術後7日目618【plus-minus】146mmHgと対照880【plus-minus】83mmHgと比較して有意の低下を認めた(p<0.01)。気管支吻合部のHP量も上記とほぼ同様であった。【結論】気管支吻合部創傷治癒においてマクロファージは術後早期において極めて重要な役割を有し、一方Tリンパ球は創傷治癒における関与は補助的な
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