研究概要 |
肺移植、気管・気管支形成術において、気道合併症を軽減させるため、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の臨床応用を目指して、bFGF局所投与方法、至的濃度、至的PHを決定することを目的とし、実験を行った。 雑種成犬を用い、左主気管支周囲の結合組織、気管支動静脈郭清(Radical hilar stripping)を施行した後、bFGFを局所投与した検討では、気管支吻合部を有茎心膜脂肪組織で被覆した群(A群)、被覆後フィブリン糊を局所投与した群(B群)、フィブリン糊を使用せずbFGFのみを局所投与した群(C群)、フィブリン糊にNa2HPO4溶液で溶解したbFGFを混和した後局所投与した群(D群)に分類した。 C,D群をPHを一定にし、濃度を1ng/ml,10ng/ml,20ng/ml,40ng/ml,100ng/ml,1μg/mlに変化させた群(至的濃度決定)、濃度を予備研究で効果のあった20ng/mlにし、PHを7.1,7.2,7.3,7.4,7.5の変化させた群(至的PH決定)で、手術直後、3、7日目にレーザードップラー血流計による気管支粘膜血流量を、さらに7日目に電磁流量計による左内胸動脈血流量を測定し、各群で検討した。 またシリコンラバー注入、軟線撮影装置(SOFTEX)による血管増生の状態を検討した。定量的検討、病理学的検討のいずれからも、D群でもっとも血流改善が著しく、以下C>B>A群の順になった。 至的濃度の検討では、40-100ng/mlの濃度でもっとも血流改善が著しかった。 至的PHの検討では、PH7.3-7.5で最も血流改善が著しかった。血流改善に関しては、気管支粘膜血流量、内胸動脈血流測定による定量的検討と、シリコンラバー到達度に関しては十分評価できたが、SOFTEXによる詳しい血流の検討、組織学的な創傷治癒の検討はさらに症例数を重ね検討する必要がある。
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