研究概要 |
これまでの基礎実験の結果が,臨床データと相関するかどうかを乳癌症例を用いて検討したところ,乳癌患者の病期は,MRP-1/CD9の発現度とよく逆相関していたため,109例のIIIb期までの術後肺癌症例を用いて,retrospective studyを行った.方法としては,quantative reverse transciptase PCR(RT-PCR)を用いてmRNAのレベルでMRP-1/CD9を評価した.対象群は1991年1月から1992年12月までの北野病院胸部外科及び大阪府立成人病センター外科で切除された症例である.その結果,MRP-1/CD9減弱群は現時点での全生存率が34.9%であるのに対して,保持群では62.3%と高値を示した.MRP-1/CD9減弱群は有意に予後不良であった(p<0.001).このことは特に肺腺癌症例で著明で,減弱群では全生存率が26.0%であるのに対して,保持群では55.4%であり,MRP-1/CD9減弱群は有意に予後不良であった(p<0.001).Coxの比例ハザードモデルで解析を行った結果,MRP-1/CD9の減弱は,N因子に次いで有意な独立した予後不良因子であることが判明した.また,同時に行ったDNAシークエンスで143番目及び163番目のコドンがAからGに置換されることがあるが判明した.アミノ酸配列ではそれぞれLYSからARG,ASNからASPであった.これらの意味については現在検討中である.
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