定位的放射線手術の治療機序および副作用予防についての研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06454409
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 井上 洋 群馬大学, 医学部, 講師 (30125827)
• キーワード: 放射線手術 / 定位脳手術 / 放射線生物学 / 脳腫瘍 / 脳動静脈奇形 / 放射線障害 / DNA損傷 / 細胞障害

研究概要

Radiosurgeryの治療機序の解明のためラット脊髄治療モデルにて、DNAおよび細胞損傷について解析した。一定期間後に脊髄壊死を生じる中線量では、治療後6-12時間でDNA損傷が明らかで、皮膚毛根細胞と脊髄白質内細胞(乏突起細胞)に多く見られた。皮膚の脱毛は2週間後に完成した。脊髄では4カ月後にmacrophageの出現が見られ、その後壊死が形成された。脱毛と脊髄壊死についてすでに報告したが(1994)、脱毛は毛根細胞のDNA損傷により、この細胞が脱落して完成することが明らかになった。脊髄壊死は白質に優位であることより、乏突起細胞のDNA損傷が一定期間後にミエリン崩壊を生じ、これに対するmacrophageの反応が壊死を引き起こすと考えられる(1996)。臨床例の治療効果より、上皮細胞の反応性(頭蓋咽頭腫、上咽頭癌)が良好であることが判明し、直達手術とradiosurgeryの併用治療にて副作用の予防が可能であることを報告した。脳動静脈奇形では、血管内手術にて早期閉塞の得られるタイプに変えることが重要であることを明らかにした。機能的疾患では視床手術や三叉神経痛の治療法を確立しつつあり、症候性てんかんの治癒率が高いことより、てんかんの治療の展望を見い出した。

研究成果

• [文献書誌] Inoue HK et al: "Pathobiology of cerebral gliomas in children and the role of radiosurgery" Stereotact Funct Neurosurg. 66. 278-287 (1996)
• [文献書誌] Ohye C,Inoue H et al: "Gamma thalamotomy forparkinsonian and other kinds of tremor" Stereotact Funct Neurosurg. 66. 333-342 (1996)
• [文献書誌] Hiroto M,Inoue H et al: "Gamma knife radiosurgery for acoustic schwannoma effects of low dose" Stereotact Funct Neurosurg. 66. 134-141 (1996)
• [文献書誌] Larson DA et al: "Prognostic factors associated with outcome of radiosurgery" Int J Rad Oncol Biol Phys. 36. 1045-1053 (1996)
• [文献書誌] Inoue HK et al: "Basal inter hemispheric supra-and/or infra-chiasmal approaches……" Chidds New Syst. (in press). (1977)
• [文献書誌] Inoue HK et al: "Treatment of unruptured arteriovenous malformation in the brain" J Clin Neurosci. (in press). (1997)
• [文献書誌] Inoue HK et al: "Adv Intervent Neurorad Intravasc Neurosurgery" Takiw,Picard L,KikuchiH (eds),Elsevier,Amsterdam, 305-310 (1996)
• [文献書誌] 大江千廣、井上洋(編): "定位的放射線治療" 日本定位的放射線治療研究会(in press), (1997)