研究概要 |
1.脳腫瘍に対する放射線治療後の脳高次機能障害の病態を解明するため動物モデルを作製し以下のような解析を行った。 生後6ヵ月のFischer344ラットを全脳に25Gy照射した群、ACNUを静注した群、照射とACNUの静注を併用した群、コントロール群に分け、体重や行動の変化を観察した。さらに処置後12ヵ月の時期に、Morrisの水迷路と受動回避学習の二つの課題を用いて高次機能障害の出現の有無を検討した。照射と化学療法を併用した群には途中で死亡した例があったが、その他の群では処置後12ヵ月で検査が可能で、照射群で明らかに障害を認めた。化学療法単独群でも障害を認めた例があり、現在組織学的検索を施行中である。 2.生後7日目のFischer344ラットの右半球に、5Gy,7.5Gy,10Gy,15Gyの照射を施行し、照射後1および2週の時期にMAG(myelin associated glycoprotein)、NSE(neuron specific enolase),S-100 proteinのm-RNAの発現の差について検討した。MAG m-RNAは照射側で有意に低下しており、その程度は照射量に相関した。NSE,S-100では有意差を認めなかった。この結果は、照射によるoligodendrogliaの障害を反映していると考えた。
|