脳腫瘍に対する放射線治療後の脳高次機能障害の病態を解明するため、動物モデルを作製し解析を行った。 1)生後7日目のFischer344ラットの右半球に、15Gyの照射を施行し、照射後1から4週の時期にGIF(growth inhibitory factor)とGFAP(glial fibrillary acidic protein)の蛋白レベルでの変動をウエスタン・ブロットで検討した。GIFは照射後1週目から照射側で有意な増加を認め、3週目で対照との差がピークとなり、4週目でも非照射側より増加していた。GFAPはやはり照射後1週目から3週目まで照射側で増加したが、4週目には、対照との差はわずかになっていた。これらの結果から、GIFやGFAPが放射線照射による組織障害や、その修復に関与していることが示唆された。 2)生後1日目の新生仔ラットから、McCarthy and de Vellisの方法に従いoligodendrogliaを分離培養した。生後18日目に相当する培養細胞をL-MAG(myelin associated glycoprotein)とGFAPで染色し、L-MAGで染色されるがGFAPでは染色されないことを確認した。同じ時期(生後18日目)の細胞に5Gy、10Gyの照射を施行すると、10Gyでは24時間後に全細胞に、細胞質の縮小と、核の凝縮(アポトーシス)を認め、最終的に全細胞が死滅したが、5Gyでは、生存する細胞が認められ、培養を継続したところ照射後10日目にGFAPで染色されることを確認した。これは分離した細胞に紛れていたastrocyte、またはoligodendrogliaとastrocyteの両者に分化しうる細胞が生き残ってGFAPの発現が照射によって高まったのかもしれないと考えた。
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