研究概要 |
脳腫瘍に対する放射線治療後の脳高次機能障害の病態を解明するため、動物モデルを作製し以下のような解析と考察を行った。 1)生後7日目のFischer344ラットの右半球に、5,7.5,10,15Gyの照射を施行し、照射後1から5週の時期にMAG (myelin-associated glycoprotein), NSE (neuron specific enolase), S-100 proteinのm-RNAの発現の差について検討した。MAG m-RNAは照射側で有意に低下しており、その程度は照射量に相関した。NSE, S-100では有意差を認めなかった。この結果はoligodendrogliaが、neuronやastrocyteよりも照射に対する感受性が高いことを示している。 2)生後7日目のFischer344ラットの右半球に、15Gyの照射を施行し、照射後1から6週の時期にGIF (growth inhibitory factor)とGFAP (glial fibrillary acidic protein)の蛋白レベルでの変動をウエスタン・ブロットで検討し、さらに、GIFのm-RNAの経時的変化についてノーザン・ブロットで検討した。GIFとGFAPは、照射後1週目から照射側で有意な増加を認め3週目にピークとなった。GIF mRNAは照射後1週目から経時的に照射側で増加し、照射後5週目でピークに達した。GIFもGFAPと同様に神経組織修復に重要な役目を果たしていることが示唆された。 3)生後7日目のFischer344ラットの右半球に、15Gyの照射を施行し、2、3、6時間後、1、3、ハ5日後にApop Tagを用いてapoptosisの有無について検討した。照射後3時間から、照射側の白質、海馬歯状回、脳室上衣下層において陽性細胞が明らかに多く認められ、照射後6時間が最も著名で、5日後には認められなくなった。この結果から、照射による白質の急性期の変化にはapoptosisが関与していることが推察された。
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