脳室内視鏡を用いた手術時に脳血流・髄液流の局所流速を測定するため光ファイバー型レーザードプラ血流速計を試作したが、内視鏡の構造上、血液や髄液からのドプラ信号は、信号雑音比が極めて悪い後方錯乱光方式で受光せざるを得ない。そこで、この制約と侵襲をできるだけ小さくし、流れを乱さないという要求を両立させるため、頭部を円錐状に加工した分布屈折率レンズを2本の平行ファイバー先端に接着させた微細なセンサーヘッドを試作し、生体外で希釈牛血および顔料混濁液の局所流速を測定したところ、良好な結果を得ることができ、脳血流・髄液流の局所流速の測定に応用を開始している。 各種病態下での脳室壁の働きを見るための動物実験では、まず水頭症での脳室壁血管や脈絡酪叢の観察および血流計測を目的に内視鏡の挿入を試みたが、内視鏡の太さのため困難で、より細い内視鏡を挿入した。次に頭蓋内圧亢進モデルでは動物脳に脳室穿刺を行い、挿入した内視鏡の側孔から脳室内に生食を注入する脳室内注水モデルを作成した。生食注入による脳室内圧の上昇から頭蓋内圧が亢進するため、注入量による血管径の経時的変化を観察している。最後に、臨床応用として各種病態でのモニターを行った。以上の実験により次のような結果を得た。(1)正常圧水頭症で、脳室壁血流の低下が壁性状の変化や脳室壁の透過性の異常と関連することから、脳室壁血流と臨床症状・検査所見の相関を確認した。(2)隔壁形成などの後遺症を伴う髄膜炎後水頭症で、隔壁が観察できた。(3)クモ膜嚢胞例では、嚢胞壁の性状を観察し生理的条件で嚢胞内からの嚢胞壁血流を評価できた。さらにシネMRIによる髄液循環動態との関連性を検討している。(4)下垂体腺腫の経蝶形骨手術で、術中内視鏡を用いた。すなわち腫瘍摘出において視野の届かない側壁を内視鏡で確認し、さらにパルスドプラで血流測定を行った。
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