下垂体腫瘍発生過程におけるホルモン分泌の表現型転換能と細胞増殖能

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06454415
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 隅田 昌之 広島大学, 医学部・附属病院, 講師 (40236047)
• 研究分担者: 川本 仁志 広島大学, 医学部・附属病院, 助手 (20274087) ; 杉山 一彦 広島大学, 医学部・附属病院, 講師 (30243554) ; 有田 和徳 広島大学, 医学部, 助教授 (90212646) ; 伊藤 明弘 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (60034633)
• キーワード: 下垂体腺腫 / cell immunoblot assay / cavernous sinus invasion / type IV collagenase / matrix metalloproteinase-9

研究概要

新しい知見としては、ヒト下垂体線腫において、海綿静脈洞侵入例に高いtype IV collagenolytic activityが認められ、海綿静脈洞侵入にtype IV collagenascが関与している可能性が示された。この知見を得るに至った、目的及び背景、対象、方法、結果の概要は、以下の如くである。間質を構成する主要成分であるcollagenの中でも、type IV collagenは基底膜に特異的に存在していると言われており、悪性腫瘍が転移するさい、これらを分解し、通過するという段階が、不可欠であるとされている。一般的に、分解過程の最初の段階で、collagenaseの中でも、matrix metalloproteinase-9(MMP-9)が重要であると考えられている。良性腫瘍と考えられている下垂体腺腫の中にも、比較的腫瘍が小さいときより、既に海綿静脈洞侵入をきたし、治療に難渋する事がしばしば経験される。我々は、海綿静脈洞侵入とtype IV collagenase活性との関係を検討することを目的とし、下垂体腺腫7例(海綿静脈洞非侵入例4例、侵入例3例)、また比較検討する意味で、下垂体への転移性腺癌の1例のtype IV collagenase活性を測定した。手術により得られた組織を、氷冷したTris buffer中で粉砕後、遠沈し、その上清をTrypsine処理し(不活性型で存在しているMMP-9を活性化する)、fluorescein isothiocyanate(FITC)標識されたtype IV collagenに反応させ、エタノール溶液にて未分解collagenを遠沈除去し、蛍光分光光度計にて、蛍光強度(FI)を測定した。その結果、海綿静脈洞侵入を伴う下垂体腺腫3例と転移性腺癌においてtype IV collagenase活性は高値を呈し、海綿静脈洞侵入を伴わない下垂体腺腫4例においては低値を呈した。この結果より、下垂体腺腫における海綿静脈洞侵入は、type IV collagenaseが関与している可能性が示唆された。
また、この知見より今後の課題として、ヒト下垂体腺腫のtype IV collagenases分泌量についての検討が必要と考えられるが、現在すでにcell immunoblot法により検討を始めている。

研究成果

• [文献書誌] Masami Yoshikawa, et al.: "Characteristics of prolactin secretion in normal and estrogen-treated pituitaries of rats at the single cell level: analysis by reverse hemolytic plaque assay." Endocrine Journal. 42(2). 235-243 (1995)
• [文献書誌] Kuniki Eguchi, et al.: "In vivo effect of cabergoline, a dopamine agonist, on estrogen-induced rat pituitary tumors" Endocrine Journal. 42(2). 153-161 (1995)
• [文献書誌] Keiichi Kawamoto, et al.: "Secretion of growth hormone(GH)-releasing hormone by GH-producing pituitary adenoma assessedby cell immunoblot analysis" Endocrine Journal. 42(1). 89-93 (1995)
• [文献書誌] Kuniki Eguchi, et al.: "Effect of cabergoline, a dopamine abonist, on estrogen-induced rat pituitary tumors: In vitro culture studies" Endocrine Journal. 42(3). 413-420 (1995)
• [文献書誌] Hitoshi Kawamoto, et al.: "Analysis of the growth rate and cavernous sinus invasion of pituitary adenomas" Acta Neurochirurgica. 136. 37-43 (1995)
• [文献書誌] Hitoshi Kawamoto, et al.: "Type IV collagenase activity and cavernous sinus invasion in human pituitary adenomas" Acta Neurochirurgica. 138(in press). (1996)