1)無動を主訴とするパーキンソン病275例、種々の本態性ジストニア21例、その他の不随意運動9例に対してMRIまたはCT誘導による後腹側淡蒼球手術を行った。 2)本手術は、症状の日内変動が著しい比較的若いパーキンソン病や、すくみ足歩行の著しい症例に対しては原則として両側手術が必要であるが、構音障害の軽度な症例では、視床手術と異なり、両側手術が一期的に実施できるようになった。 3)小児期に発症した捻転ジストニアは症状が全身に広がりやすいが、本手術で著しく改善されることが多い。成人におけるジストニアは顔面、頸部、四肢に限局することが多く、淡蒼球手術よりも、むしろ視床腹外側核手術で改善されることが多い。小児期発症の捻転ジストニアは、パーキンソン病の寡動と並んで後腹側淡蒼球手術のもっとも良い手術適応である。 4)術中微小電極法により、寡動の著しいパーキンソン病では、線条体の基礎的背景活動が低下しており、淡蒼球内節では著しく亢進していることが多く、捻転ジストニアでは、線条体と淡蒼球の基礎活動は共に高いことを観察した。 5)微小電極法により、淡蒼球内節に随意運動または不随意運動に関連した運動関連ニューロンが記録され、この部位に限局した凝固が不随意運動に対してももっとも効果的であった。 6)パーキンソン病における淡蒼球内節の基礎活動の亢進は、レボドーパの投与により筋固縮の改善と一致して低下し、ドーパミン代謝異常に関連した機能的変化であると思われた。 7)痙性斜頚4例に対し後腹側淡蒼球手術お行ったが有効ではなかった。純粋な痙性斜頚は視床手術でも無効なことが多く、定位脳手術の立場からは本症をジストニア症候群と考えるには疑問が残る。
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