研究概要 |
Persistent Vegetative State(PVS)の概念については、Jennett and Plumの1972年の報告以来、American Academy of Neurology,The Multi-Society Task Force on PVSなどをはじめ、数多くの報告がされてきた。しかし、具体的な神経症状からみたPVSの評価法ならびに個々の神経症状の意義については、現在も明らかにされていない。そこで、1.move the trunk or limbs spontaneously 2.move the trunk or limbs respond to pinch 3.cramp the teeth,grunts,moan or scream 4.gag,cough,sucking or swallowing reflex 5.brief orienting response 6.sustained visual pursuit 7.blink to visual threat 8.emothional expression responde to noxious peripheral stimulationの8項目について、発症後3ヶ月の時点で評価を行ない、電気生理学的評価法ならびにdeep brain stimulation therapyによる長期予後との比較を行なった。 神経症状の6-8が認められる症例と他の症例では、電気生理学的評価と長期予後に明らかな差を認め、神経症状の1-5までの症状を呈するものをPVSとして各種の治療法を検討する必要があるものと考え、神経症状の6-8が認められる症例をPVSとするのは不適当であると結論された。さらに、神経症状が1-5までの症例においては、神経症状のみで長期予後の比較は困難で、電気生理学的評価が有効であった。すなわち、発症後3ヶ月の時点では、神経症状が1-5のみの症例でも、電気生理学的評価では、かなりのvariationが存在し、脳波連続周波数分析にて脳波の脱同期化を認め、ABRの第V波、SEPのN20が記録され、Pain-related P250が記録される症例では、deep brain stimulation therapyによって、高率にPVSから脱却可能な症例が存在することが明らかとなった。また、PVSでは、深部体温の日内変動や髄液中のPGE2,PGD2の日内変動が明らかではないが、deep brain stimulation therapyでは、これらの日内変動を創出することが可能で、睡眠-覚醒サイクルに関与するこれらの神経伝達物質の変動を考慮した刺激方法をおこなっている。これまでに、20例中7例が完全にPVSから脱却している。
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