ラット筋皮弁における筋肉変化を調べる目的で、ラット大胸筋皮弁の作製法を新しく開発した。この作製法に従って、SD系雄ラットの大胸筋を用いて、支配神経温存群、脱神経群の2群に分けて島状筋皮弁を作製した(1グループ5匹ずつ)。筋皮弁作製後、24時間、48時間、1週〜8週までの毎週、3ヶ月〜6ヵ月までの毎月、の計28グループ(140匹)で、経時的な形態学的変化の観察とタンパク定量を行った。その結果以下のことが結論された。 1)筋皮弁における筋肉は、神経温存群、脱神経群とも変性していく過程を示した。 2)神経温存群の変性は、24時間後既に筋線維の萎縮があり、1週〜4週で筋線維の再生が起こるものの、7週以降で再び萎縮する経過をたどった。 3)脱神経群の変性は、24時間後から筋線維の萎縮が見られ、時間の経過と共に進行していく過程をとった。 4)脱神経群の筋肉変性は、神経温存群の変性に比べて、時期的に約2ヶ月程度早かった。 5)筋皮弁の筋肉は、神経温存群、脱神経群と共に脂肪組織に置換されていく変化をとった。置換される脂肪組織の量は、6ヵ月後の時点で、神経温存群が1/3〜1/2、脱神経群が1/2〜2/3であった。 6)筋タンパク定量では、6ヵ月の時点で、神経温存群が81.36±6.65%、脱神経群が51.14±1.48%となり、その値は神経温存群が脱神経群より多かった。これは筋の萎縮程度を反映しており、その値はそれぞれの筋の形態学的量にほぼ相当していた。
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