研究の背景:変形性関節症は加齢とともに患者数が増える。近年の高齢化社会をむかえ、老人の活動能力を制限して大量の医療資源を消費することからも、変形性関節症の理解とコントロールは重大な問題である。この変形性関節症の原因を探るために、われわれは分子生物学的手法を用いて従来の研究とは違った面からの解析を試みようとした。 研究デザイン:変形性関節症において、まず変化するものは軟骨である。この軟骨の主成分となるものはタイプIIコラーゲンであり、タイプIIコラーゲンの遺伝的変化による疾患はすでにいくつも知られ、その中にautosomal dominant apondyloarthropathyと命名された一群がある。この概念のなかに、我々臨床医が『多発性変形性関節症』と呼ぶものが含まれているはずであるが、その異同はまだ明瞭ではない。最終的には、通常型の変形性関節症における遺伝子異常を検出したいのであるが、現在の知見ではまだそのヒントも得られていない。そこで通常の変形性関節症の特殊型ともいうべきこの『多発性変形性関節症』において、特にそのタイプIIコラーゲン遺伝子周辺において、遺伝子の異常の有無について検討した。 研究経過:最終的に5人の患者を見い出した。末梢血を採血しDNAを分離精製した。アミノ酸519位を中心としたものなど、PCRプライマーを5種5組、組み合わせとして8通り以上のPCR反応を行った。その解析には塩基配列決定まで行った。 研究結果:明らかに異常と思われる遺伝子の証明は失敗した。 この研究による結論:臨床的に多発性変形性関節症と診断された患者において、異常な遺伝子を証明することはできなかった。しかし、存在しないという結論ではない。
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