研究概要 |
1.人工心肺下に行われた胸部大動脈瘤と開心手術症例において、経時的に血中、肺胞液中のL-1,IL-1α,TNF-α,β,IL-8および接着分子のE-selectin,L-selectin,p-selectinの変動を測定し、肺血管内皮と好中球、マクロファージとの接着動態を検討している。術前の肺機能、人工心肺稼働時間が血中接着分子の変動に及ぼす影響につき解析するために、症例数を積み重ねている。 2.人工心肺下に施行される胸部大動脈瘤および開心術患者において、経時的に血中、肺胞液中のIL-1,IL-1α,TNF-α,β,IL-8および接着分子のE-selectin,L-selectin,p-selectinの変動を測定し、解析中である。測定キットを有効に使用するため、現在サンプルを保存中である。試験研究の結果では症例数が少ないが、人工心肺の稼働時間が上記測定項目に影響を与えている傾向がある。 肺血流の途絶期間が再灌流障害を大きく規定する因子であるとの傾向が得られており、肺胞液中の上記接着分子の変動を追加検討している。肺胞液中の好中球分離は困難なため、肺胞液中のsoluble接着分子の測定に計画を変更した。測定は一部しか行っていないが、症例を積み重ねれば、血中濃度との関連から人工心肺後のガス交換能阻害の病態がより一層明確になると考えられる。 3.今後の研究の展開 一酸化窒素(NO)が接着分子の変動に関与するとの報告がなされており、現在動物実験で人工心肺中に投与したNOが接着分子の変動に及ぼす影響を検討中である。上記測定結果とこの動物実験の結果を勘案すれば、人工心肺中に接着分子が及ぼす影響の評価とそれに対する治療手段につき同時に解明することが期待される。
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