研究概要 |
手術患者146例において麻酔による生体内電気電導度と組織血流量の経時的変化を追求し以下の結論を得た。 1.麻酔開始前の皮膚電導度と末梢の組織血流量は年齢,肥満度,精神緊張度などによって異なり、とくに疼痛刺激を加えることにより末梢血管収縮に基づく組織血流量の低下と皮膚通電性の著明な上昇が認められた。 2.麻酔導入後はどの麻酔法によっても血管拡張に基づく組織血流量の有意な増大が認められ(P<0.01)、サイアミラル導入後では約10分後に最高値に達した。一方皮膚電流量は血流量の変化からやや遅れはするが、ほぼこれと逆相関的に低下し20分以内に最低値を示した。 3.これらは皮膚通電性の変化は測定点の組織特性によって異なり、いわゆる良導絡点として考えられている公孫,太衡,湧泉,内庭などの経穴点上では導入後の皮膚電流量の変化が著しく、導入前値に比し常に0.01>P<0.05の範囲で有意であった。 4.麻酔維持期における末梢血流量と皮膚通電性は、両者とも比較的安定した経過をたどった。 5.手術終了後、麻酔薬の投与を中止すると皮膚血流量は急速に減少しはじめ、これに伴って通電性は再び増加の傾向を示した。 6.高血圧患者で麻酔開始前にnicardipineを投与した群では、血流量の変化はさらに増大し、皮膚通電性がより減弱した。 7.これらの現象は動物においても実験的に確かめられた。 8.皮膚通電性の変化は末梢組織血流量の変化を反映し、麻酔中の循環動態を現す良き指標の1つとなりうる。
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