研究概要 |
平成7年度では,ブタ前脊髄動脈の微小血管を用いて実験を行った.1)内皮の確認:ブラディキニン10^<-7>Mでの拡張の有無で血管内皮が温存しているかどうかを確認できた.内皮を剥奪した標本では,ブラディキニンで拡張が全く見られなかった.2)血管支配神経:最初に,前脊髄動脈を白金電極を用いて経壁電気刺激(20mA,刺激幅0.3mse,1Hz)でおこなった.その結果,経壁電気刺激でわずかに収縮がみられた.この収縮物質はnorepinephrineではない.norepinephrineは血管拡張をきたしたからである.脊髄血管において電気刺激による収縮がどのようなtransmitterを介するかは今後の課題である.3)白血球の作用:白血球はFicol-Conray液で採取し,遠沈した後リン酸緩衝液にて浮遊させた.白血球の作用を見るには,5ml/分で灌流することは白血球の量がかなり大量に必要であることから困難であり,白血球浮遊液を直接バスの中に注入する必要があった.そのため,温度制御のための特製バスの作成が必要であった.バスはニクロム線で加温し,コンピュタ-制御で温度を37℃に保持できた.Krebs液では時間とともに炭酸ガスが減少するため,液はHepes液としpHはNaOHで7.40±0.05に調節した.その結果,白血球は10^4/mlから拡張が見られた.10^5/ml,10^6/mlまでその効果が見られたが,10^7/mlでは白濁し血管径を測定することは困難であった.また、ブタ冠動脈で低酸素は白血球の拡張作用を増強した.4)アシドーシスの影響:アシドーシスは高炭酸ガスによるpHの低下する場合(いわゆる呼吸性アシドーシスと同環境)と炭酸ガス分圧は正常(40mmHg)であるがpHを低下(いわゆる代謝性アシドーシス)する場合,及び高炭酸ガス分圧であるがpHは正常である3群で検討した.その結果,炭酸ガス分圧そのものはブタ脊髄血管を収縮する作用があるが,pHの低下は逆に血管を拡張することが証明された.以上の結果から,微小血管ではわれわれが従来から行った太い血管を用いた実験結果とは異なることがわかった.
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