今年度は吸入麻酔薬が虚血-再潅流による心筋障害に与える影響を検討した。マウスの胎児心より培養心筋細胞を得、虚血による心筋細胞の障害過程を明らかにする目的で、まず過酸化水素存在下での障害における心細胞内カルシウム濃度の変化をカルシウム感受性蛍光色素を用いて検討した。カルシウム感受性蛍光色素lndo-1を培養心筋細胞に負荷したのち、上記の虚血-再潅流モデルにおける心筋細胞内のカルシウム濃度の変化を平成6年度購入の細胞内イオン測定装置(CAM-230、日本分光)で測定した。培養心筋は自動拍動するが、この装置では約100Hzの速度で蛍光強度を測定でき、拍動毎の細胞内カルシウム濃度の変化を観察可能であった。また、成体ラットの単離心筋細胞を用いて、同様の虚血-再潅流モデルを用いて、同様に吸入麻酔薬の心筋細胞内カルシウム濃度に与える影響を平成6年度購入の細胞内カルシウム濃度は徐々に増加した。吸入麻酔薬であるハロセンは過酸化水素存在下での心筋細胞内カルシウム濃度の上昇を抑制した。一方、新しい吸入麻酔薬であるセボフルレンは過酸化水素存在下での心筋細胞内カルシウム濃度の上昇を促進させ、また心筋細胞内カルシウム蓄積を悪化させた。またイソフルレンはセボフルレンと同様に過酸化水素存在下の心筋細胞内カルシウム濃度上昇を促進させた。以上からハロセンは何らかの機序により過酸化水素により心筋細胞内カルシウム濃度の上昇を抑制することが示唆された。
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