気道・肺にはirritant receptors、stretch receptors、J-receptorsなどさまざまな刺激に反応する受容体が存在し、それらの受容体からのインプットは自律神経系の介して呼吸・循環動態に影響を与える。麻酔ガスを含めてさまざまなガスの吸入は気道・肺の受容体を直接刺激し、呼吸・循環に瞬時的な影響する。本研究ではまず、 1)麻酔下の動物(イヌ)を用いて、最近重症な心・肺疾患を持つ患者の治療として吸入され始めたNOの動脈圧受容体反射に及ぼす影響を観察し、NO(5、50ppm)の吸入は、ニトログリセリンによる降圧試験、フェニレフリンによる昇圧試験で検討した圧受容体反射に影響しない。低酸素誘発の肺血管収縮反応を抑止しする。 2)麻酔下の成人(研究に対する同意の得られた)では、上気道、気管、左右の気管支の麻酔(4%リドカインの噴霧)によって、irritant receptorsへの機械的な刺激、stretch receptorsへの肺加圧刺激による循環系の反応、心拍数増加・減少・血圧の上昇・低下が抑制ないし抑止される。 3)麻酔下の成人(研究に対して同意の得られた)では、自律神経機能に強く影響するα2-アドレナリン受容体アゴニストであるクロニジンの存在は、α1-アドレナリン受容体アゴニストであるフェニレフリンの血管(昇圧)反応、またβ1-アドレナリン受容体アゴニストであるイソプロテレノールの心臓作用(心拍増加反応)をいずれも増強させる。 4)局所麻酔薬ブピバカイン、ロピバカインの全身投与は、高濃度で動脈圧受容体反射を抑制し、この抑制はPaCO2の低下で部分的に拮抗される。 などの結果を得て、ガス吸入や気道への麻酔は、気道の受容体や圧受容体を介して呼吸・循環反応に複雑に影響していることが示唆された。
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