これまで主に雑種犬で動物実験を行なってきたが、この研究ではできる限りビ-グル犬を用いた。ビ-グル犬は雑種犬に比べて小さいため、preparationが難しいが、比較的安定した実験モデルが作成できるようになった。今回、分離肺循環モデルで灌流肺にTNF-αを0.1μg/kg/minの速度で10分間投与したところ、シクロオキシゲナーゼ阻害薬(イブプロフェン12.5mg/kg)とNO合成酵素阻害薬(NG-nitro-L-arginine 30mg/kg)を前処置した場合にのみ灌流肺の肺動脈圧の有意な上昇傾がみられた。また、TNF-α投与後にHPV反応とアンギオテンシンIIの昇圧反応も有意に増強した。このことから、TNF-α投与ではシクロオキシゲナーゼ代謝産物、EDRFが肺血管収縮反応を調節していると推測された。 生体においてはサイトカインは単独で作用せず、同時に数種類が作用していると考えられ、またTNF-αはPAFを誘導するといわれており、これらが相乗的に作用して肺障害がより強なる可能性が考えられる。今後、TNF-αとPAFを同時投与した時の反応についても検討を行ないたいと考えている。
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