研究課題/領域番号 |
06454452
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
正木 英二 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40221577)
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研究分担者 |
天木 嘉清 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30056767)
森山 道彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (00246448)
近藤 務 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (90211250)
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キーワード | NO(一酸化窒素) / ハロゲン化吸入麻酔薬 / 還元鉄 / ヘモプロテイン / ニューロトランスミッター |
研究概要 |
NO(一酸化窒素)は様々な組織、細胞で産生される大変ユニークな細胞間、細胞内情報伝達物質である。中枢神経系においてNOはNMDAレセプター刺激により誘導され、興奮性ニューロンのニューロトランスミッターとして働き、記憶、意識、痛みの発現に深く関与していることが示唆されている。NOの標的細胞内での受容体はグアニレートサイクレースの還元鉄であり、この還元鉄との反応によりc-GMPが産生され、細胞機能が惹起される。一方、現在用いられている麻酔薬の主流である、ハロゲン化揮発性吸入麻酔薬がいまだにその作用機序が不明であり、さらには古くからヘモプロテイン中の還元鉄との反応が有名である。そこで、脳内グアニレートサイクレース還元鉄でのNOとハロゲン化揮発性吸入麻酔薬の拮抗作用が予想され、この作用が吸入麻酔薬の作用機序とどのように結び付くのかを調べることをこの実験の目的とした。SDラット脳より溶解性グアニレートサイクレース分画を作成し、この分画に、NO溶液、揮発性吸入麻酔薬飽和溶液等を加え、最終産生物であるc-GMPをエンザイムイミュノアッセイにて測定した。溶液中のNO,麻酔薬濃度はそれぞれ、NOモニター、ガスクロマトグラフィーにて測定した。NOによりグアニレートサイクレース活性は著明に刺激され、われわれが予想していたよりはるかに低い濃度である2×10^<-9>(M)レベルで確認された。代表的揮発性吸入麻酔薬のハロセンはこのNOの作用を、0.5〜2.8(mM)の範囲で濃度依存的に抑制した。さらにはNOを加えないときでもハロセンはグアニレートサイクレス活性を有意に抑えた。このことは脳内グアニレートサイクレース還元鉄レベルで揮発性吸入麻酔薬はNOの作用を拮抗的に抑制し、さらにもう一つ別のNO情報伝達系抑制部位を持つことが強く示唆された。しかしこのことが、未だ明らかとなっていない吸入麻酔薬の作用機序と結び付くか否かは、さらなる検討が必要である。
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