研究課題/領域番号 |
06454457
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 修 京都大学, 医学部, 教授 (70025584)
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研究分担者 |
水谷 陽一 京都大学, 医学部, 助手 (10243031)
筧 善行 京都大学, 医学部, 講師 (20214273)
寺地 敏郎 京都大学, 医学部, 講師 (50207487)
藤田 潤 京都大学, 医学部, 教授 (50173430)
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キーワード | 尿路上皮癌 / 分子遺伝学的診断 / 尿中剥離細胞培養 / p53遺伝子異常 / MDM2遺伝子増幅 / MTSL / p16遺伝子異常 / 多剤耐性関連遺伝子発現 |
研究概要 |
尿中剥離細胞の短期培養を51例の尿路上皮癌患者および40人の正常人で行った。初期培養成功率は腫瘍患者で86%、正常人で68%、第一継代成功率は各々75%と38%であった。尿路上皮腫瘍の部位別にみると、腎盂や尿管といった上部尿路に腫瘍を有する患者13例では第一継代成功率が100%で膀胱腫瘍のみの群の65%に比し有意に高率であった。腫瘍でのp53核染色陽性群と陰性群では前者の継代成功率91%、後者61%でp53核染色陽性群が有意に高い短期培養成功率を示した。現在、p53核染色陽性群の各症例の腫瘍におけるp53変異を調べ、同一症例の短期培養系で得られた細胞のDNAに対し、変異した塩基配列特異的な遺伝子増幅が可能であるか検索中である。 p53遺伝子が正常でも、これを抑制的に制御するMDM2遺伝子の異常増幅によりp53遺伝子の機能が損なわれ、遺伝子の不安定性が生じる可能性がある。50例の尿路上皮癌についてMDM2遺伝子の異常増幅の有無を解析したところ2例の浸潤性癌で増幅を認めた。この2例ではp53遺伝子の変異を伴わず、Int-2遺伝子の同時増幅を認めた。p53遺伝子の変異を伴わないMDM2遺伝子の異常増幅による尿路上皮癌の悪性進展の頻度は高くはないが存在すると思われた。 MTS1/p16遺伝子を中心とする9p21-22領域の遺伝子異常の尿路上皮癌における有無を解析したが、9p21-22のLOHが1/29、SSCP法によるMTS1exon2の異常は1/40と低頻度であった。MTS1/p16遺伝子の異常が尿路上皮癌の発生や悪性進展に関与する可能性は低いと考えられる。 尿路上皮癌より得られた微小組織サンプルよりRNAを抽出し、PT-PCRにより多剤耐性関連遺伝子の発現レベルを定量的に解析した。52症例の組織サンプルにおけるMDR1、MRP、 DNAtopoll、GST-pi遺伝子の発現レベルを解析した結果、MRPとGST-pi遺伝子の平均発現レベルが他の2者に比し有意に高かった。 MRP遺伝子の発現レベルとMDR1およびGST-pi遺伝子の発現レベルには正の相関を認めた。 以上、尿路上皮癌の分子遺伝学的診断を行う上でどのような臨床材料が診断可能であるか、また、より客観的な判定基準をどのように設定するかを上記の具体的な標的の解析を通じて検討を続けている。
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