研究概要 |
本研究は、1.正常分娩後における母体末梢血中胎児有核細胞の存在比率とその経時的変化、2.妊娠・分娩時に帝王切開術施行などにより胎児から母体循環内への多量の血液流入があった症例におけるこれらの細胞の存在比率とその経時的変化、の2点の基礎的事項について明らかにしたうえで、3.これらの細胞を用いた新しい出生前診断法の開発を行うことを目的とした。 平成6年度の研究の結果、「研究目的」1については、Polymerase chain reaction(PCR)およびfluorescence in situ hybridization(FISH)を用いた分析により、正常妊娠・分娩後においては母体末梢血中胎児有核細胞は経過とともに減少し、分娩後3カ月で母体有核細胞の1/(100,000)未満の量となり同定不可能となることをはじめてあきらかにした。一方2については、妊娠・分娩時に帝王切開術施行などにより胎児から母体循環内への多量の血液流入があった症例においても、分娩直後は相当量母体末梢血中に胎児有核細胞は存在するものの、その後は急速に減少し正常妊娠・分娩後と同様に分娩後3カ月で母体有核細胞の1/(100,000)未満の量となり同定不可能となることが証明された。以上より、第2子以降も本診断法が利用可能であることを国内外を通じてはじめてあきらかにすることができた。さらに3については、まずFISHを用いた胎児細胞の同定による胎児性別の非侵襲的出生前診断の研究を行い、その結果性別診断は可能であるとの結論が得られた。 以上のように、当該年度は概ね当初の計画どおりに進行することができた。
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